美鳥の日々 第10話

この作品の面白いところは「右手が女の子」になるというアイディアだと思うのですが、それと同時にこの作品の問題というか枷になっているのがこの「右手が女の子」といったアイディアだと思います。

右手という体の一部にいることで、人間関係(恋愛関係)を描くにあたって大事な距離というものが0になってしまうので、正治が右手にいる美鳥といった存在を受け入れてしまった時点でふたりの関係を発展させることが困難になってしまってるんですよね。自分の体の一部を好きだ嫌いだ言ってられませんし。

一身同体ということで、ふたりが見るもの聞くものすべてを共有してしまうので気持ちのすれ違いなどを生ませることが難しいし、たとえケンカしようにも物理的な距離も置くことができませんし、例え恋におけるライバルが現れようにもすべてのことが筒抜けであるがゆえヤキモキのしようがあまりありません。

なので見てる側にもそういった緊張感みたいなものが生まれないんですよね。つまり、一心同体という関係性のため他者の介在をまったく受け入れないものになっているんです。

とはいえこの点を作者は上手い具合にギャグとして利用していて、例えば綾瀬の正治への果敢なアタックなんかがそうです。ふたりの安定した関係を逆手にとって妄想という形で一人相撲をさせてそれをギャグとしているんですね。

ただ以前から感じていた不安みたいなものがあって。この安定した関係性が、逆に閉じた狭い世界へと繋がってしまわないかという点。

この作品におけるクライマックスは正治と美鳥がもとの体に戻り、そして今度はお互いがひとりの人間として関係を構築していくことであると想像できるのですが、ここで正治と美鳥だけの問題とせずに、いままでの登場人物をキチンと活かして欲しい。

最近まとめに入ってきたように思われるサンデー誌上の耕太の扱いといい、どうしても美鳥と正治以外のキャラはギャグとしての扱いから抜け出させようとしてない。このままじゃ読みきり漫画ですんでしまうような話で終わってしまうんじゃないかとちょっと心配。

アニメは1クールといったこともあり、はじめから2人の関係に焦点を絞っている感じなのでどういった結末を見せてくれるか楽しみですけど。