劇場版AIR

知識としてはTV版のみ。出崎監督作品としては劇場モノを何本か見たことある程度。

まず何よりTV版とは違い、他者の存在、町の存在がものすごく明確に出ている事に驚く。町の通りには人が居て車が走り、電車も動いているごく当たり前の風景。もちろんそこには働く大人や学校生活を楽しむ学生や友達と遊ぶ子供が居る。
そういった世界なので、学校の先生やクラスメイトといった観鈴を見る他者の視点があって。観鈴にもそれまで生きてきたという、ハッキリとした過去の思い出というものが存在する。

とまぁここまできて思ったのが、ああこれって完全に難病ものなんだなという事。ただ一人過酷な運命を背負ってしまった観鈴の物語。だからこそ当たり前の世界を描写して、変わった人であることを代弁するクラスメイトが存在し、生きてきた証としての思い出と往人との出会いがある。

劇場版という尺と、原作の物語を考えれば上手いまとめ。と言うよりもこれ以外ないだろうな。翼人関係は背負ったもの特殊さとして観鈴にリンクさせ、往人の能力も観鈴との出会いの奇跡なんかとして効用させていたりと、原作の持つものをきちんと拾い上げている所は上手いと思うし、単純にテーマとしてまとまっているので単体の映画、物語としては十分に面白い。

ただ逆に言えばその単純さが作品としての面白さを奪っているのも事実。あまりにも他者が介在したと言う咀嚼部分が無いので、AIRという作品の名を借りた難病物語のテンプレートを見せられたようにも感じられてしまった。