涼宮ハルヒの消失

babitto2010-02-13

涼宮ハルヒの消失
上映時間162分。あっと言う間と表現するには長する時間なのだが、実際に観てきた感想としてはホントにあっと言う間。ダレる事も間延びを感じさせる事もなく、一つの物語として十二分に満足させられる出来だった。
特筆して挙げられるのは物語への没入感。劇場版ともなると、モブと呼ばれる群衆にまで行き届いた作画が観る者を楽しませてくれるものだが、この作品はそれに留まらず、そのモブを意図的に際立たせる事で、誰もが体験してきただろう賑やかで楽しい学園生活から、一転して向けられる改変後の周囲の冷ややかな視線と、キョンの置かれた状況をとても分り易くまた効果的に演出してみせている。
些細な日常の違和感から現れた改変された世界。ただ一人残されてしまった孤独感と、そんな中で見つけた長門が残してくれたたった一つの手掛かり。ここまで来ると完全に感情移入させられてしまって、スクリーンからは目が離せなくなってしまう。不安と焦りの中でハルヒの元へと駆けていく時の高揚感、そしてハルヒの顔を見つけた時の言葉にならないほどの安堵感。膝が笑って竦んでしまうキョンの気持ちが痛いほど伝わってくる。

ここらはちょっと本編に含んだ話を。本作のヒロインが長門有希である事は言うまでもないのだが、それと同時に興味深いのが朝倉涼子の存在だ。なぜ長門は一番身近な者として朝倉を選び残したのかということ。家というパーソナルな空間にまで入り込み食事まで世話する一方、キョン長門への想いを問いただし、いざそれが彼女を傷つけるとわかるや否や排除に向かって動き出してしまう彼女。
そこに生々しいまでの、一人の女の子としての負の感情が見えてしまうのは、恐らく自分だけでないはず。近づきたいけど怖い、怖いけど近づきたい、そんな自分でも抑えられない気持ち。だからこそ長門は、キョンにとってトラウマのような存在である朝倉にその想いを隠す。そして隠しながらも、ハルヒという一番近しい者と入れ替えて(座席が象徴的)、キョンの気持ちを問いただしてしまうのだろう。矛盾、大いなる矛盾だ。でもだからこそ人としての輝きをもって見られているのだと思う。そう「長門有希俺の嫁」と(笑)

余談。市川で鑑賞したのだが、一部で話題になってるようなマナーの悪い客は全くなく快適に見れました。メインは若い男性だったけど、女性層も多く、中には年配の夫婦らしき方々も居て驚かされた。